ムサビ通信 3ヶ月間の社会人学生生活の感想

きくちです。ムサビ通信の皆様にはいつも大変お世話になっております。

私は今年度(2023年度)4月に武蔵野美術大学造形学部通信教育課程デザイン情報学科デザイン総合コースに3年次編入しました。

社会人学生生活3ヶ月を終えての所感を記事として書き残しておこうと思います。

私のこと

私は今年社会人4年目を迎えました。就職前は國學院大學という人文系大学に通い、2019年に卒業しています。今までデザインの専門的な教育を受けたことはありません。

現在は都内のIT企業でエンジニア・デザイナー・フォトグラファーなど幅広い仕事をしています。

ムサビ通信に通い始めた理由は、仕事でデザインをしていて、独学の方法論に限界を感じたためです。
仕事をしていて周りに教えてくれる人もいないため、これから先の人生を考えた時、自分で学びにいくしかないと考えました。

ムサビ通信に入ってよかった?

現時点では、ムサビ通信に入って3ヶ月目の時点では「良かった」と感じています。理由は様々ありますが、以下に幾つかそれぞれ解説します。

①教育の質が高い

入ってみて驚いたのは、授業内容の質が非常に高いことです。特にスクーリングでは、第一線で働くデザイナーの皆さんが直接講義を行なっています。

学問的な質が高いのはもちろん、実際に仕事をする上で必要なデザインの考え方、方法論を実体験を元に教えてもらうことができます。

どうしてそう感じたかというと、講義で習った内容が1週間以内には実際の仕事で使えるということが何度もあったからです。机上の空論ではなく、実際に使える「生」の情報を学ぶことができていると感じています。

また、カリキュラムの具体的な内容も、全てがそうではありませんが、通学制のものが一部流用されて使われているようです。

②デザインが好きな人たちと交流できる

私が5年前に通っていた大学と大きく違うところです。
私が通っていたのは人文系大学ですから当たり前ですが、デザインに興味のある人なんて超少数派です。その時からデザインやプログラミングが好きでしたが、そういう観点で話が合う人は皆無でした。

ムサビ通信は180度違います。私より若い人から60代の方まで、デザイン(ないし美術)を学ぶ意欲を持った幅広い層の人たちが全国から集まっています。話してると愛知や静岡から来た人とか、関西の方も多くいますし、四国から飛行機で通っている人もいました。

そういうわざわざ遠くから通学するモチベーションの高い人たちも含め、デザインを志す人たちと一緒にスクーリングで講義を受けて、時には制作したり、グループで交流したりすると本当にいい刺激になります。

私はムサビ通信関連の交流や情報収集を兼ねてSNSを沢山使っていますが、ありがたいことに普段ネット上で交流している人たちに話しかけてもらったり、時に話しかけに行ったり、一緒に制作したりということもありました。

18歳の前に美大が選択肢にあることに気づいていたら、どんなに大学生活が楽しくなっただろうと思います。もちろん前の大学に行ったことは後悔していませんが、選択肢に美大がある時点で、とても幸せなことだと思いました。

③今まで視野が向かなかったデザインや美術に目が向くようになる

私はムサビ通信に入学して、普段デザイナーをしているなんて言っておきながら、実はデザインについて何も知らなかったことに気づきました。

それだけ、限られた理論や知識、技術で今まで仕事をしていたということです。

ムサビ通信で触れる情報によって、講義以外にも知らなかったデザインや美術の事柄に目が向くようになり、視野が非常に広がったと感じています。

私は写真が好きでよく写真美術館に行ったりするのですが、ムサビ通信に通い始めてから美術館で見る写真の「解像度」が高くなったような気がするし、普段自分で撮る写真についても考えをより深めるようになりました。

体系的に学ぶことの大切さを身に染みて実感しました。

入学前に知りたかった、ムサビ通信Q&A

ここからは、入学して3ヶ月で知った、私が入学前に知りたかった情報をQA形式でまとめます。

Q. 3年次編入時に認められた単位数は?

A. 基本的に4年制の大学を卒業していれば、上限(62単位)まで認められるようです。

入学相談会で聞いた話では、誰でも62単位は認められるようです。

Q. 卒業率は?

A. 実勢で10%くらいが現実なのではと推定します。

2022年度は、全学年2634名中161名が卒業しました。

所属年次内訳が公開されていないのでなんとも言えませんが、1年次所属の方が297人なので、こちら4年次の方の人数を単純計算すると (2634-297)÷3=782名で、うち161名卒業なので20%ということになります。

多分、4年次所属の方は単純計算で出した782名よりかなり多いと思いますので、そう言う意味では実勢で10%くらいなのでは?という話です。もしかしたらもっと低いかもしれません。

以下が学科別の卒業生の内訳です。()内は全学年の人数です。

  • 油絵学科 96名(全1152名)
  • 工芸工業デザイン学科 15名(全144名)
  • 芸術文化学科 22名(全474名)
  • デザイン情報学科 28名(全873名)

以上、実数値は「学校法人 武蔵野美術大学 2022年度事業報告」より引用

Q. 2年で卒業できそう?

A. かなりきついです。

私個人の例で話せば、6月は毎週スクーリングかリモート授業があり、7月も隔週であるような状況なので、6~7月は仕事を含めると40日間「休日」がありません。

「じゃあスクーリング取らなきゃ良いのでは?」と思われるかもしれませんが、課題を自宅で着々とこなす通信授業だけだと、多分それはそれで大変で病むと思うので、大学の現地に行って人と話しながら勉強した方がマシだと思います。

あと、スクーリングはちゃんと頑張れば単位だけはどうにかなるようなものが大半です(まだ4ヶ月目なのでわかんないけど)。でも内容がどれも大変です。

通信授業課題は採点に時間がかかりますので、手っ取り早くスクーリングに行って単位を取ってしまうというのも戦略(?)かと思います。

Q. 友達はできる?

A. 人によると思います。

積極的に交流しにいかないとできないと思いました。

客観的な事実としては、通学制の大学よりできにくいと思います。

なぜなら、通学制の大学は大抵サークルがあるのでサークルで友達を作ることができるからです。
ムサビ通信に通学制と同じような仕組みのサークルはありません(学習会はある)。

通信の人がムサビの通学の人たちに混じってサークルに入る例も一部あるようですが、基本的には認められていないようです。

大体はスクーリングなどで会った人と交流していくうちに友達になるみたいな感じになると思います。

Q. 京都芸術大学通信教育課程(瓜芸通信)との違いは?

A. (デザインについては)勉強する内容が分かれていない、1つの学科で幅広いデザイン理論を学ぶところ。

あとスクーリングが三鷹・吉祥寺(2023年で取り壊し)・鷹の台(国分寺)と、都心から離れている(瓜芸通信は神宮外苑にキャンパスがある)。

歴史はムサビ通信が圧倒的に長く、70年以上です。正確には「武蔵野美術短期大学通信教育課程」が1959年に開設されています。
今の形式である4年制になったのが2002年です。
瓜芸通信は1998年に開設されていますので、4年制大学の通信教育課程としては瓜芸の方が長いです。

Q. 「通学制」美大の代わりになる?

A. 部分的にはなるが、ならない部分もあると思います。

勉強する内容は通学制の武蔵美と遜色ないものが提供されている(と感じています)ので、そこは代わりになると思います。卒業すれば4年制美大卒ということで、学位も卒業証書も一緒です。

ただ武蔵美においては、学園祭である芸祭やサークル活動なども盛んと見受けられますので、そういう意味での学生生活の楽しさはどうしても通学制の方が充実していると思います。
また、そういう課外活動から生まれるクリエイティブみたいなものも少なからずあると思います。
私が通っていた前の大学も学園祭が超絶盛んというわけではなかったですが、仲間と色々作っていく過程は楽しかったですし、いい思い出です。

大学の意味をどう捉えるか、何を重視するかによって、代わりになるかならないかは変わってくると思います。

Q. スクーリングやメディア授業の受講料高くないですか?

A. 高いけど、内容を考えれば高くないと思います。

これも入学して気づいたのですが、入学案内に記載されていたスクーリング授業とメディア授業の受講料の目安内(134,000円)で履修を収めるのは「ほぼ無理」です。

私の場合、今年は入学金と授業料の合計355,000円とは別で今年は「213,000円」かかる見込みです。

それでも合計で568,000円で、通学制の武蔵美の年間学費(だいたい190万円くらい)と比べれば、1/3以上安いわけですが。

私もそんなに生活に余裕があるわけでもなく億万長者でもないので、履修登録の時は「高いな〜」と思っていたのですが、実際に授業を受けてみると高い理由も理解できました。
まず、一つの授業で何人もの質の高い専門教員が惜しみなく投入されていて、それだけでも人件費が多くかかっていると思います。
また、教室のiMacや工房の設備が充実しており、ハード面でもかなりコストがかかっていると見受けられます。

ですので、受講料は高いと思いますが、中身を考えれば妥当だと思います。もちろん、学生としてはもっと安い方がいいですが。

まとめ

ここまでの話を総合すると、ムサビ通信はとても良いところです。
また、ムサビ通信に通う人は皆いい人たちばっかりです。教員の皆さんも、本当に素晴らしい人たちです。

あとは、自分の体がもつかだけが懸念点です。

※写真は全て武蔵野美術大学吉祥寺校舎で撮影

参考文献

2022 年度 事業報告書 2022 年 4 月 1 日から 2023 年 3 月 31 日まで 学校法人 武蔵野美術大学

https://www.musabi.ac.jp/wp-content/uploads/2023/06/report_2022.pdf

武蔵野美術⼤学学位規則(2022年度版)

https://www.musabi.ac.jp/wp-content/uploads/2022/03/regulation_degree_2022.pdf